東京高等裁判所 平成8年(う)113号 判決
被告人 廣瀬善明
〔抄 録〕
関係証拠によると、被告人は、高校時代に自動二輪車の運転免許を取得したことがあり、その後、上京して新聞販売所の新聞配達員として働く傍ら、一〇年位前には普通乗用自動車の運転免許を取得するため自動車教習所に通い第三段階まで進んだが、仕事の関係で退校し運転免許の取得には至らなかったこと、その後、数年前には、実家にある兄所有の軽四輪貨物自動車に兄の子らを乗せて路上を運転したことがあったことが認められる。
被告人は、原審において、普通乗用自動車の運転について自信がない旨を供述しているが、被告人は、右のとおり自動車運転についてある程度の経験を有していたほか、本件事故前、小島から「水仙」から大田郷までの運転を頼まれた際にも躊躇することなくこれに応じ、現に本件事故現場まで一キロメートル程度の距離を支障なく運転していること、本件事故は、被告人が考えごとをしていたため前方の注視を怠った過失によるものであり、同人の運転技能それ自体の未熟さに起因するものではないこと等の事情にかんがみると、被告人は無免許とはいえ客観的には運転技能を有し、かつ路上における運転についてそれなりの自信を持っていたものと認められる。
そして、右に認定した被告人の運転歴、運転技能、被告人が本件車両の運転の依頼に応じた状況等からすると、被告人は、将来にわたり、機会があれば、他からの求めに応じるなどして自動車を反復継続して運転する意思を有していたものと推認することができ、被告人の本件自動車運転はその業務に属するものというに妨げない。
(小林充 山田利夫 多和田隆史)